先生方は、患者さんの健康状態を診る時、様々な検査結果にもとづいてチェックをされていらっしゃると思いますが、「クリニックの健康状態」は、「決算書」からチェックできるのです。

 前回は、「損益計算書」「貸借対照表」が、何を示しているかについて、ご説明しました。

 今回は、「損益計算書」について、もう少し、理解を深めましょう。

●損益計算書は、「収益」「費用」「利益」から成っている

 損益計算書にはいろいろな科目がありますが、基本的に収益(医業収益)と費用と利益で成り立っています。

 さらに、「費用」は、変動費と固定費に区分されます。

 変動費というのは、医業収益の増減に伴って変動する費用のことです。薬品等の原価や検査などの委託費が、医業収益の増減に伴って変動しますので、これに当たります。

 固定費は、医業収益の増減に関係なく、固定的に発生する費用です。人件費や減価償却費、金利などが、これに当ります。


●医業収益から変動費を引いた「限界利益」をつかんでおく

 医業収益から変動費を引いたものを、「限界利益」といいます。

 この「限界利益」から、人件費等の固定費が支払われます。その限界利益から固定費を引いたものが経常利益、というわけです。

 ですから、固定費が限界利益より多くかかってしまうと、経常利益はマイナスになります。つまり、限界利益というのは、「固定費をここまでの金額に抑えれば赤字にならない、限界の金額」といえます。


●損益分岐点医業収益も把握する

 もう一つ、院長先生や奥様につかんでおいていただきたいのは、損益分岐点医業収益です。

 損益分岐点医業収益とは、経常利益がゼロになる医業収益のことです。言い換えれば、「固定費と同額の限界利益を生むための医業収益」ということです。


 損益分岐点医業収益は、
《 固定費÷限界利益率(限界利益÷医業収益) 》
の算式で求めることができます。

 医業収益が、損益分岐点医業収益を超えると黒字になりますが、それ以下だと、クリニックは赤字ということです。損益分岐点医業収益は、クリニックが何としても達成しなければならない医業収益なのです。

 例えば、医業収益が15,700万円、変動費が5,170万円、固定費が10,225万円で限界利益が10,530万円のようなクリニックの場合の損益分岐点医業収益は、《10,225万円(固定費)÷〈10,530万円(限界利益)÷15,700万円〉》で、15,238万円です。

 したがって、このクリニックとしては、赤字に陥らないために、何とか15,238万円以上の医業収益を上げなければならないわけです。