(1)粗利益率の変化を見る

 あなたのクリニックの粗利益率は、何%ですか?

 税務署には、その地域の全事業者の申告書が集まります。したがって税務署では、「この業種で、この業態であれば、粗利益率はどれくらい」という数字をつかむことができます。

 なぜ、こんな話を持ち出したかと言いますと、税務署は、あなたのクリニックの粗利益率が同業のクリニックと比べて高いか、低いかを知っているということです。

 粗利益とは、医業収益から材料仕入や委託費といった原価を差し引いた利益のことで、医業収益に占める粗利益の割合が、粗利益率です。

 粗利益率が平均より極端に低い申告が続くとすれば、税務署のひとつの見方として、
 ・医業収入を少なくしているのではないか?
 ・診療材料などの仕入れを多くしているのではないか?
という疑問をもつのも否定できません。

 ですから、あなたのクリニックの粗利益率が、下がった年度については、上のような疑問が出てくることがあります。そういうクリニックは、調査して実態を調べてみようという事になります。


(2)経費の増加を見る

 経費の中にも目を光らせます。どんな風にでしょうか?

 その特徴は、2期比較です。決算書が税務署に提出されると、その決算書には、赤ペンで、前期の数字がそれぞれの箇所に書き入れられます。

 そして、そこから見るポイントは2つ。

 1)大きく増加しているもの

 2)その経費が医業収入と関わりが深いもの

 この2つで、何の疑問が浮かぶでしょうか?

 そうです。経費の動きが大きいのに、医業収入が増えていない?

   何かおかしいかも?と思うのです。


(3)特別な損失を見る

 毎年同じような経費には問題がないとしても、クリニック経営始まって以来、初めて出てくる経費があるとしたらどうでしょう? 何か計算に間違いはないのかなぁと疑問をもちます。

 例えば、

 1)スタッフが退職して多額の退職金を払い、経費にした。

 2)土地を売却して大きな損失を計上した。

 3)多額の貸倒れ損失を計上した。

 確かに、クリニックとしては、当然の経費であり、損失ですが、本当にこれらが事実なのか、計算は正確なのかは、調べてみないとわからないですよね。

 その結果、税務調査に・・・・・

 「税務調査が好き」という院長先生や奥様はあまりいらっしゃらないと思いますが、この税務署の視点の共通点を知る事は重要です。

 税務署は、クリニックの利益が出ない理由を見ているのです。

 もしも、院長先生自身が、
 ・どうして利益が昨年より少なくなったんだろう?
 ・医業収入が増えているのに、利益が出ないのは何故だろう?
と考えた場合は、

 i 粗利益率に問題はないか?(仕入に問題はないか?)

 ii 経費に問題はないか?(無駄な経費はないか?)

 iii 特別な損失に問題はないか?

 というようにチェックしてみて下さい。